愛知県豊川市に4月4日、約190の専門店が入る大型商業施設「イオンモール豊川」がオープンする。イオンモールとしては東三河に初の店舗だ。流通大手の進出は、コロナ後も見すえた地域経済に影響を与えそうだ。
3月5日、敷地内で植樹祭があった。2千人ほどの住民が約1万6千本の木を植えた。そのなかに、スズキ(浜松市)の鈴木修相談役(93)の姿もあった。
鈴木氏を案内したイオン(千葉市)の岡田元也会長(71)がやりとりを明かした。鈴木氏から「東三河で中心的な存在(店舗)になるのか」とたずねられた。岡田氏が「そうですよ」と答えると、鈴木氏は喜んだ様子だったという。モールの壁面には、スズキの広告看板も掲げられている。
この一帯には、かつて東京ドーム約3個分(13万9千平方メートル)の広さのスズキの二輪車工場があった。約2・5キロ離れた市内の別の場所にはスズキの軽トラックの工場もあった。
この軽トラックの工場こそ、鈴木氏が1960年代に「建設準備委員長」として陣頭指揮をとった縁がある。スズキにとって本社以外に構えた初の工場で、「このプロジェクトの成功は、たいへん大きな自信になった」と自著で振り返るほど、鈴木氏は豊川という場所に思い入れがある。
スズキも日立も撤退
モールがある名古屋鉄道八幡駅の南側には、スズキのほか、日立製作所(東京)の製造拠点もあった。製造業を取り巻く環境が悪化し、両社は2014年に相次いで撤退を表明。地元に衝撃を与えた。
工場従業員の雇用問題に加え、「税収面でも非常に痛手だった」と頭を抱えたのは、当時は副市長の竹本幸夫市長(69)だ。
製造業が相次ぎ撤退するなか、豊川市は「ピンチをチャンスに変える」と再開発に市費を投じます。また、大型商業施設の完成に、地元の経済界では商機ととらえた動きも活発になっています。
ただ、工場跡地が商業施設に生まれ変わる事例は各地でみられた。豊川でも流通系企業からスズキの跡地への引き合いがあった。市は住民向けの説明会を重ね、19年に跡地周辺を「工業専用地域」から「近隣商業地域」に転用した。モールを「交流人口増加の核」と位置づけた。
「ピンチをチャンスに変える…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル